ヒロコVとゴルフ「第6話 私を立ち上がらせてくれた‟声”」
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第6話
「私を立ち上がらせてくれた‟声”、そして今」
母が他界した事での心にポッカリと開いた穴は大きく、辛く、痛かったです。冷たい床から頭をもたげ上げるのさえ出来ないほどの虚脱感でした。
私の中で、時間が止まってしまったのです。
そんな状況が続いたある日のこと、NHKの番組である女性のインタビューを目にしました。シスターの格好をした女性で、名前は渡辺和子さんという女性でした。
渡辺さんはこのよう事を話されていました。
「立ち上がれないほどつらい思いをしたら、休みなさい。そして立ち上がる元気が出たら・・・。
心に開いた穴から何が見えるか、覗いてごらんなさい。これまでとは違う風景が見えてくるかもしれませんよ。」
その言葉が心に留まりました。
どうせこれ以上悪くならないくらいの状態なら、怖いものはない。彼女が言うように立ち上がって、穴から何が見えるか見てみようか。
そこから聞こえてきた音(声)は・・・
「どんなに練習をしても上手くならない。自分はダメなのではないかと思う。」
「生徒の年齢、柔軟性、運動神経、目的に合ったスイングを教えてほしい。」
「自分のスイングを理解したい。でもどこをどのように、どう直せば良いの?」
以前日本のゴルフ事情のリサーチをした時に聞いた、ゴルファーの声でした。
彼らの気持ちが、痛いほどよく分かりました。だって私にも昔、上手くなりたくてもなれなかった時代(アマチュア時代)があったから。
私はアメリカに渡り「自分のスイングの長所を活かすことでゴルフがどれだけ変わるか」を経験しました。
理想の型にスイングをはめ込むのではなく、一人ひとりの体を元にスイングを改善していく事、スポーツ科学を元に分析するメソッドを、日本人初のUSLPGAインストラクターとして学んできました。
「あなたのように理論的にスイングを解説できるプロはいないのだから…。」
母が昔、私に語った言葉です。当時は親の欲目だろうと思っていました。でも、今その言葉が何よりも嬉しい。自分にはまだすることがある・・・。心の底に何か熱く込み上げてくる力を感じました。
心に開いた穴の先に見えた新しい目標。それはアメリカLPGAメソッドを、日本のゴルファー事情に合わせて紹介していくこと。一人でも多くの方のゴルフの楽しさを伝えていきたい。
ゆっくりと立ち上がり、その目標に向かってまた歩み始めることが出来ました。
今回が最終章です。最後までお読み下さり有難うございました。